たくさんイイ本をよみましょ!!
長いあいだ たくさんの人に読まれて 今でも感動が起こる本
「こころのチキンスープ」14 ダイアモンド社 より抜粋
涙のあとには ヘレン・ルーケー(フリーランス・ライター)
訳者/ふくおか・さちこ
医者の言葉が頭の中で鳴り響いた。
「もう病院で出来る事は何もありません
化学療法も効かなくなりましたから
残念ですが、お母さんはあと三ヶ月もつかどうか・・・」
目頭がつ~んと熱くなった
あと三ヶ月・・・三ヶ月後にはイースターが来るというのに
私は飛行機の座席に座らせ シートベルトを締めた
それから 窓側の自分のシートに身を沈め
サングラスをかけて横殴りの雨を眺めた
私は目の片隅で母を見た
母は頭をシートの背にもたせかけ 休んでいる
母のいない生活なんて 想像することもできない
私はティッシュを握り締め 暗い空をじっと見つめた
その時 物音がして私は目を上げた
背の高い男性が 七歳ぐらいの女の子を連れて入ってきて
私たちの隣の席に座らせたのだ
「うちに着いたらすぐ おかあさんに電話してもらうんだよ
七月になったらまたおいで
待ってるから」
女の子の髪を撫でながら 男はささやいた
「愛してるよ お前が行っちゃうと寂しくなるな」
それからやにわに立ち上がり 逃げるように飛行機を降りていった
私はその子供をちらりと見た
可愛い少女だった
長い金髪を三つ網にしている
大きな青い目に ちょっぴり上を向いた鼻
そして前歯が一本抜けていた
この子 母の迷惑にならなければいいけれど・・・・と私は思った
私は拳を握り締め 胸の重苦しさを押しのけようと試みた
あと三ヶ月 あと三ヶ月・・・・
気が付くと 飛行機は陰鬱な空へと飛び上がっていた
小さな女の子 リサ---胸の名札にはそう書いてあった
リサはじっと座って 頭をうなだれていた
大粒の涙がそのぽっちゃりとした頬を滑り落ちたが
彼女はそっとそれを隠そうとした
母が屈み込んで ティッシュでその涙をやさしく拭った
「あら 笑顔はどこにいっちゃったの?」と母はたずねた
リサはびっくりして 青い目を見開いた
何か言おうとする先に その顔に笑みが広がった
「ほうら 笑った」と言って母はシートに寄りかかったが
その目は子どもに注がれたままだった
「知ってた リサ?涙のあとには 必ず笑いがやってくるのよ」
リサは首を振った 「どうしてわかるの?」
「長いこと生きていれば いろんなことがあるからよ」
たしかに そのとおりだった
思い返せば 私が子どもの頃にも母はやはり
私を慰めてくれたものだった
私が転んで膝をすりむいたときは
私の涙を拭いてやさしく言った
「いいことを教えてあげるわ
涙の後には 必ず笑いがやって来るのよ
膝の傷はすぐによくなるわ
それに 今度砂利道を走る時は もっと気をつけるでしょうよ」
ティーンエージャーになって初恋に破れると
私はこれまで以上につらい涙を流した
少なくとも その時の私にとっては
私が真っ暗な部屋の中ですすり泣いていると 母がささやいた
「しばらくは つらいかもしれないわね」
それから 私の手をとって言った
「でも毎日はこれまでどおりよ
それに あなただって」
母の言うとおりだった
私はちゃんと生き延びた
私は リサに話しかける母の顔が輝いていることに気づいた
その生涯をとおして 母は子どもたちに囲まれてきたのだ
母はいつだって子どもたちのために お話や ゲームや
お菓子を用意していた
窓を振り返ると 暗い雲が流れていた
そうだわ 母は涙のことなら良く知っている
この三年ほどは 一日を笑顔で過ごすため
夜ごとに涙を流してきたのだ
もう一度 リサの声が聞こえた
「あたしね パパとママにもう一度一緒に暮らしてほしいの
でも ダメなんだって
パパはほかの人と結婚しちゃったし ママにもボーイフレンドがいるの」
私は母が身を乗り出す気配を感じ その声がこう言うのを聞いた
「一緒に住んでいるより 別れたほうが幸せなこともあるのよ
あなたは お父さんにもお母さんにも幸せでいてもらいたいでしょう?」
「うん」と答えたリサの声は震えていた
「あなたは何歳 リサ?」
「もうすぐ七歳」
「それじゃ いいことを教えてあげるわ リサ」
母の弱々しかった声が力強さを帯びてきた
「これから時間は飛ぶように過ぎていくわ あっというまにあなたは
高校を卒業し 大学を卒業し それから結婚して子どもをもつようになるでしょう」
びっくりした顔で リサは母を見上げた
「そうね ええと・・・・」
名前を知らなかったことに気づいて 彼女は青い瞳を母に向けた
「私のことならベッシーって呼んで」
「オーケー ベッシーさん」とリサ
母は続けた 「お父さんやお母さんと離れて暮らすのは つらいかもしれない
だからこそ 一緒にいられる時間を大切にしなくちゃ
お父さんといるときは うんとお父さんに甘えていいわ
お父さんのお手伝いをして 新しい奥さんとも仲良しになるのよ」
母は ハンドバックに手を入れて何かを探した
「喉がひりひりしてきたわ
こんなときは このペパーミントのキャンディがあると助かるの
あなたもひとついかが?」
セロファンをはがす音と 子どもがくすくす笑う声が聞こえた
母はまた話し始めた
「子どもにとって お母さんは最高の友だちよ
お母さんは特別な人ですものね
どんなことがあっても 子どもを愛しているから
だから 困ったときは 思い切ってお母さんに話してみるのよ」
あたりは静まり キャンディを噛む音だけが聞こえた
「大人になったとき あなたは ふたりの大切な人が自分を愛してくれていることが
わかるようになるわ
そして そのふたりと過ごした時間は 幸せな思い出としてずっと残るのよ」
喉元に熱いかたまりがこみあげてきた
私には思い出が残るのだ
幸せな思い出がずっとずっと残るのだ
「もちろん つらいこともあるでしょうし 涙を流すこともあるでしょう」
と母は続けた
「でもそれは 誰の人生にもつきものなの
でもそんなときは思い出してね 涙のあとには 笑いがやって来るってことを」
母は シートの上に投げ出されたリサの小さな足をやさしく叩いた
「笑いがやって来るまでに 時間がかかることもあるかもしれない
大変な問題を抱えているときはね
でも 信じてね 笑いは必ずやってくるわ」
私は窓の外を見た
空は輝く日の光に満ちていた
私はサングラスをハンドバッグのなかにしまい
それから笑顔で母を見 母の頬にキスした
「笑いがやって来るまでに ちょっぴり時間がかかっちゃったわね」
やがて飛行機は着陸した
リサは立ち上がって振り返り 前歯の抜けた口でにっこりと笑った
「ありがとう ベッシーさん
キャンディを分けてくれて それからお話してくれて」
私は罪悪感を感じた
どうして この小さな女の子が母の迷惑になるかもしれないなんて
思ったのだろう
母にとっても 少女にとっても つらいはずの飛行機の旅が
涙を分かち合い やさしい言葉を分かち合い
キャンディと笑顔を分かち合う旅になったというのに
私も 胸のつかえがとれ 心が軽くなったような気がした
私はささやいた
「ありがとう ベッシーさん リサに話しかけてくれて
ありがとう お母さん 私にも語りかけてくれて」
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Comments
しんいちさん コメントありがとうございました。最近新人指導であわただしく今ブログを更新いたしました。 ちょっとめでたい話題を書きました 見てくださいね。
Posted by: Cドライブ | December 21, 2005 at 10:52 PM